どうも、さわざわです。
今回はスイッチトキャパシタアンプについて、特段サンプル・ホールド機能に関して着目して触れていこうと思うよ。まあサンプル・ホールド回路って精度なり速度なりいろいろ深い部分はあると思うので、その前段として内容を絞って考えていこうって感じ。スイッチトキャパシタアンプはアナログ回路で多岐にわたって用いられている回路要素だと思うので、みんなも勉強していってねい。
この記事を読めば、スイッチトキャパシタアンプのサンプルホールド機能について動作原理から理解することができます。
サンプル・ホールド回路とは
サンプル・ホールド回路(S/H回路)とはその名の通り、信号をサンプルして、サンプルした信号をそのままホールドするって回路のことだよ。メモリと違ってアナログ回路ではアナログ値をそのまま保存するってことになるので精度とかが非常に重要になってきて、これをもってADCなどに応用されていたりするよ。
ちなみに以下のようにサンプリングスイッチとアンプを組み合わせて、信号をサンプルするホールドモードと、サンプリングした信号を維持したまま出力へ読み出すホールドモードに機能がわけられるよ。ただサンプリングスイッチに関しては、アンプの電流源とか他の部分でも多岐にわたって用いられているよ。これはまたのお話。
あとはサンプリングした信号を増幅して読み出す回路を含めて(上記に増幅モードとかあるように)、総称でスイッチトキャパシタアンプなんて言われるみたいだけど、今回は簡単化のためにそのまま信号を読み出すサンプル・ホールド回路に絞ろうと思うよ。ただしサンプリングのテクニックは同じような感じかなと。
サンプルからホールドまでの動作原理
では以下の回路図をもとにサンプル・ホールド(S/H)機能について説明していくよ。サンプリングスイッチを含めて、容量の他にアンプと3つのスイッチTrから成るよ。
まずサンプル中は以下のようにSW1とSW2がonしていて、SW3はoff。
ここでSW1がonの意味はVinを取り込むためにもちろんわかると思うんだけど、SW2がonの意味について考えてみよう。これはSW2がonすることXのノードとVoutがショートされるわけで、Xのノードがバイアスされた状態になるんだね。
このXノードは仮想接地ノードなんて言われるけど、ここではまずこのXノードがバイアスされたってことに着目しよう。これの意味を深ぼると、ホールド容量CHにおいてノードX側は入力に依らず一定にバイアスされた状態になることから、Vinに応じて容量が充放電を起こすってことになるんだ。ここで、容量の←のノードはVinになるような電荷が容量に保存されると。
次に重要なことだけどSW1を切る前に、SW2を先に切るよ。これは何で?
この心はSW2がオフったことで、Xノードがバイアスされた状態からフローティングへと変わるね。これによって容量の電荷はそこからVinが変わろうとも、SW2を切る前の電荷を保存しようと働くことになるんだ。
この後Vinと容量を直接つなげているSW1を切るんだけど、つまりはそのSW1を切った瞬間がサンプリングの終了なのではなくて、SW2を切った時点でXノードがフローティングに変わったことで、容量の電荷は保存された状態になっているんだね。
なので↑のようにサンプリングはSW2を切った時点で終わるってことだね。ここまでがサンプルモードとでも言えよう。
そしてその時点でCHの←側はVinになるように電荷が保存されていたわけだから、SW1を切った後にSW3をonすることで、VoutがVinと同じになる(ここからがホールドモードとなるよ)。
厳密にはこの動作も興味深くて、SW3onの瞬間は当然Vout≠Vinであるため電荷の再分配が起こるのだが、Xノードがフローティングであることから容量内の電荷は維持しようとするために、Xノードの電位を変化させてアンプに流れる電流を調節しVoutの電圧を同じだけ変動させて、結果的にVout=Vinと保存された電圧にもっていくんだね。
こうしてVinを保存して出力まで持っていくことができて、S/H回路が実現できたわけだね。
精度の話をちょっとだけ
S/H回路にフィードスルーの話は避けられんね。
フィードスルーってのはまたサンプリングSWの話でも語る際に書き直そうと思うけど、SWを切った瞬間にTrから電荷が抜けて隣接ノードの電位が変動したり、SWをオンオフした際にゲートの変動電位が周囲にカップリングを持って電位が変動することを指すよ(前者はチャージインジェクション、後者はクロックフィードスルーというが、総じてフィードスルー(FT)と呼んどく)。
最初から行くと、まずはSW2を先に切った際にSW2からノードXなりVoutなりに伝搬されると。Voutの変動は後ほどVinに移動させるように動くだけだしバイアスされたような状態かと思うので重要ではないんだけど、ノードXは変わるのは大問題となるんだ。
それは先ほどあったようにSW2を切った時点で電荷保存が決まって、ホールド状態が終わるまではこのノードは外部からの変動を受けたくないんだけど、FTのようにフローティング側で電位の変動が見えてしまうと当然CHの左側はVinでバイアスされた状態なので電荷の充放電が起こってしまうんだね。つまりはSW1のまだonであるこの時点でも読み出される電圧はVinからズレたものであることが確定しちゃう。
ここでズレる量なんだけど、S/Hを使用するたびに変わるパラメータって何かなって考えたときにVinだけなんだね。他は毎度同じ回路を使うのでパラメータ的な変化はないと。
毎度同じ回路で、SW2をオンした状態から始まるわけだから、その際のノードXの電圧ってのも同じになるわけだね。FTって単にVgsの変動が大きいほど影響が大きくなるので、S/Hで毎度SW2を切る際に生じるFTってのは同条件下では同じ量ってことになるんだね。
なのでオフセット的な誤差といえて、これってのは差動方式を採用したりCDSっていうノイズキャンセル技術を採用したりすれば最終的には取り除けるんだ(どっちも一長一短なのはまたのお話。ちなみに差動方式でもFTのキャンセルは完全にはできない、Why? とかって書いたらrazaviっぽい?)。
次にSW1を切る際にもFTが生じるわけだけども、これはVinに応じてチャージインジェクションの量だったりSWがオフるまでのVgsの変動量が変わってくるので、ばりばり入力依存が見える誤差になるんだね。
入力依存のある誤差ってめっちゃ厄介なんだけど、ここではSW2を先に切った恩恵が見えて、すでに保存電荷が確定していることから、CHの←の電荷がFTによってガクンと変動してもSW3オン時にはVinに戻るように働くんだね。SW3オンの際のFTも同様。
ところでさっきも述べたようにこの動作中にフローティング中のノードXはかなり重要というか変動を受けると誤差となるセンシティブなノードになるので、ここに入力依存の誤差が乗るようなことは避けたいね。すなわちレイアウト設計の際にこのノードのカップリングはよく考えないといけないかな。
以下の容量に関する記事を書いてるので、読んだらもうちょっと理解が深まるかも!
→アナログ回路における容量について考える
もう一つはS/HにおいてはkT/Cノイズも考慮しないといけないけど、これはキャンセルが難しい。S/H回路内でkT/Cキャンセル機能ってのもできるんだけどこれはまたのお話で。kT/Cノイズについては以下から。
→kT/Cノイズとノイズ帯域幅について
ちなみにアンプの中身は(個人的疑問)
このアンプって差動入力シングルエンドみたいな書き方してるけど、実際ほんとにプラス側がgndについてる場合はほぼ機能しないので単純ソース接地のようなアンプで同じことをすればいいんかね。ところがこれだとPSRRとか悪くなっちゃうのでいろいろ工夫しないといけない。
差動で用いたい場合は図のように+側は何かした固定電位をバイアスして(ACで0V)、電流は2倍必要だけどこれならPSRRは緩和できるかね。
ここでは精度の話は細かくは述べなかったけどスイッチトキャパシタアンプのアンプはオープンループゲインがかなり高くないと出力がズレていってしまうので、カスコードなどは必須かな。
次回予告ってほどでもないけどS/H回路は結構深いというか勉強中なのでまたいくらかまとめてみたりするかも。
今日はここまで、ほな。
雑談枠
ちょっとよさげな店で、お刺身盛り合わせとか前菜の盛り合わせとかきて、これが何でこれが何でってお店の方に説明いただくけど、説明の後半には前半のほうの説明はもう忘れている。何だか忘れた前半のやつをもぐついてた後は、後半のやつの説明もすべて忘れてる。結局何を食べたのかは分からないのだが、美味しいのである。
おすすめ書籍紹介(Amazonに飛びます)
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