どうも、さわざわです。
ここでは前回のローパスフィルタ(LPF)に引き続いて、似て非なるハイパスフィルタ(HPF)について触れていこうと思うよ。回路設計においていたるところで現れるLPFと違って、HPFはなかなか意図せず出てきたりなんてないかもしれないし目立たないほうかもだけど、条件によっては出てきたり位相補償とか応用的な内容では用いたりもするので、基礎的な周波数応答からどんな場面で出てくるかとかも含めて話していくよ。みんなも勉強していってねい。
本記事を読むことでHPFの伝達関数と周波数特性の考え方がわかります。
HPFの伝達関数
基本的なHPFの回路図は以下のようになっているね。LPFに似てるけど違うのは信号の入出力間に容量Cが直列に入ってて、出力に抵抗Rが並列に入ってることだね。寄生成分でRCがこういったつき方で支配的になることは少ないので、それがLPFより目立たない所以かな。
前回と同様に以下の図で、gndから見て右のような分圧が行われてるね。なので分母にはRと1/jωCの直列抵抗、分子には1/jωCが入って、伝達関数が以下のように出てくるね。前回と大きく違うのは、分子にも周波数の式が入ってることだね。
容量は低周波だとインピーダンスが大きく電流を流しにくくするので、低周波では(1に対してjωRCが小さいと)VinとVout間のインピーダンスが大きすぎて開放されているように見えるね。つまり電流は全く流れず信号は出力へ伝達されない。定性的な考え方はこんな感じだと思う。
HPFの周波数応答
じゃあ周波数応答を見てみよっか。とりま分母が複素数なので複素平面で場合分けするけど、ここはLPFと同じ式なので考え方は前回を参照してね。
→ローパスフィルタについて
場合分けの結果は以下。
伝達関数の分母に代入して、前回と違うのは分子にjωCRがいること。分母がωCRの場合は分子と打ち消しあって、周波数特性が消えるね。逆に分母が1だと分子がそのまま残ってωCRと周波数に応じて増加する項が出てくる。
以下のようグラフにしてまとめると、確かに1/RCより低周波で信号を減衰させるハイパスフィルタになってるね。
ポールとゼロ
今回は周波数応答の考え方に触れたけど、簡易的に伝達関数を解いていくときにはラプラス変換っていう偉大な数学的ノウハウを使うことがあるよ。詳細は別途するかもだけど、jω=sと置き換えて以下のようになってる。このとき分母が0になるsの値をポールって呼ぶよ。
あらゆるアナログ回路の伝達関数にはこのポールが存在していて、例えばLPFの場合はポールp=-1/RCだね。んで、この正負入れ替えた値がポールの角周波数で、この周波数で信号の伝達が-20dB/dec落ちますよってことを表す。これはLPFの考え方と一致するよね。
分母がsが二つ出せる(二次関数になってる)ような二次の伝達関数の場合もあって、この時はポールが二つある状態で、1個目のポールで-20dB/dec下がって、そのまま2個目のポールの周波数帯まで行ったらさらに-20dB/dec落ちて-40dB/dec落ちるってことになるよ。
詳しくは別途にするね。
また今回のようなHPFの場合だと、ラプラス変換で下記のようになっていてポールの角周波数が同じく1/RCあるけど、分子にもsがついてるね。分子が0になるときのsをゼロって呼んで、この場合は実数項が分子にないからゼロは0(駄洒落じゃないよ^^)。この正負入れ替えた値がゼロの角周波数なのでこれも0。
これはこの周波数から+20dB/decになることを表してる。つまりHPFの場合、0Hzから周波数があがっていくにつれて+20dB/decで増えていって、1/RCを迎えたときに分母のポールが効いて、-20dB/decが加わる、つまりゼロと打ち消してゲイン変動なし、という特性になることを表してて、これも今日の周波数応答と同じことを言ってるね(ついでだけど、LPFはゼロはないよね)。
こんな感じで2次以上の伝達関数だとラプラス変換ってのをうまく使うことが多いみたい。安定性とかの話もあるので、続きはまたの機会にね。
回路設計におけるHPFの考え方
HPFが見える一例だけど、これはソース接地回路で意図せず寄生成分で見える場合。寄生によっては信号の入力から出力までの経路に容量がつくことがあって、これがハイパスフィルタ成分に見えることがあるんだ。
一般的には下の入力MOSが飽和で駆動してい場合、ゲート・ドレイン間容量Cgdってゲート・ソース間容量Cgsよりも小さく見えて、それ以上に入力端子に見えるゲート容量とか出力容量が支配的で、ハイパス成分が見えることってあんまない気がするけど、このCgdはミラー容量で大きく見えることには注意が必要だね。
ミラー容量もそのうちしっかりお話しするねい。あとは意図的にHPFをはさんで(ゼロを挿入して)位相補償っていうアンプによく使われる技術とかもあるけど、長くなってきたのでおさらばする準備に入るわ。
次回予告
最後に次回予告。
アナログ回路の最も基本的ともいえるソース接地回路について、小信号等価回路の伝達関数と周波数応答について触れようと思うよ。例えば下記の回路の周波数応答がどうなるか、考えてみてほしい。これは前回のLPFの考え方の応用でできるので、チャレンジしてみてね。
雑談枠
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