回路設計

ソースデジェネレーションによる線形化について

どうも、さわざわです。

今回はソースデジェネレーションについて触れていこうと思うよ。これは回路の線形化技術として用いられるもので、回路ブロックのコンダクタンスにメスを入れるような回路なので、さわざわ的には回路のコンダクタンスと出力抵抗の関係を分けて理解するのにこの回路って適任だと思うんだよね。みんなも勉強していってねい。

この記事を読めば、ソースデジェネレーションの線形化技術について、小信号等価回路の観点から理解できます。

回路の非線形性について

最初に回路の非線形性について触れるよ。これはちゃんと深掘りするとえげつない長い内容なのでさっぱりと。以下のようにソース接地回路があって、この際のゲインはいくつになるかな?

今回はゲインの計算をvin→voutの伝達関数ではなく、システムのコンダクタンスGmと出力抵抗Routに分けて考えよっか(これだとゲインの正負がわからないけど、ソース接地なのでマイナスは決め打ち)。ゲインAvは以下のようになるね。
ソース接地の小信号等価回路から伝達関数からの計算は以下でも詳しく述べてるよ。
ソース接地回路について_いろいろなソース接地回路に触れよう編

Gmは電圧を電流に変換する能力のパラメータであり、Gmを考える際はvinだけ小信号として扱って、vout=0Vにするのでroにも電圧はかからず、Gm=ids/vin=iout/vin=gmとなるね。

一方でRoutはvin=0Vとしてvoutのみ小信号として扱うので、出力にはroとRDの並列抵抗が見えて、ro>>RDとするとほぼRDしか見えず、Rout=vout/iout=RDとなるね。

なので最終的なゲインは以下のようになったね。

ここでゲインにはgmが入っているよね。gmは飽和領域の応答において、vgsに対してidsは2乗の特性を持ちその傾きから算出されたものであるから、基本的にvinに対してgmは線形でなく、非線形性が強いパラメータなんだね。なので入力の小信号の線形性を崩さずに出力したい場合に、上記は向いていないよ。

ソースデジェネレーションの特性

ソースデジェネレーションの役割のメインはこのgmをできるだけ見えないようにして、線形なゲインを作ることにあるんだね。ソースデジェネレーションを以下に示すよ。ソースに線形抵抗を入れていて、負帰還になっていることがわかるかな?

つまり、vinが上昇してidsが増えた際にRsに流れる電流が増えるわけで、これによりvs(=ids*Rs)の電位が上昇するね。そうするとvgs(=vin-vs)が小さくなって結果的に電流が減るように働くんだね。
これによって電流特性は2乗まで行かずに、比較的線形的な応答になるってのが定性的な理解だよ。

次項からはこれを解析するために、小信号等価回路からゲインを出してみるよ。

小信号等価回路からソースデジェネレーションの解析

ここでもGmとRoutに分けて、上記ソースデジェネレーションの小信号応答を考えてみるよ。ここでは簡単化のために、基板バイアス効果は無視して考えるよ。

まずRoutだけど、以下の真ん中のように小信号等価回路で書けるわけで、右のように入力段側とRDの並列抵抗で見えるってのはいままで通りの考え方だよね。なので複雑そうなRo2を計算して、並列に見てみよう。

Ro2の計算は以下のように小信号等価回路から計算出来て、結局roがかかった項になっているね。ro>>RDの場合は入力段側に電流が流れないってことなので、結局Rsも見えなくてRout=RDに近似できるね。

次にGmについて考えるよ。Vout=0としたときのiout/vinを出していこう。小信号等価回路は以下のようにかけるね。

ここでもroが非常に大きいとして、ioutはroを通らないとしよう。そうなるとioutの経路は一本に絞られるね。
ここでキルヒホッフの電流則からioutとgmの関係は以下のようになるね。

またioutはそのままRsも通るので、vsの電位は以下のように表せるね。

式①と式②からvsを削除してGmを計算すると以下のようになるね。

ではAvに代入していくと、以下のようにできたね。

このときRs>>1/gmにすることができれば、分母はRsしか見えなくなり、Avは以下のようになるね。つまりはgmがゲインに見えなくなり、線形な応答を実現することができるよ。

ここで上記の近似をするにはgmとRsを大きくする必要があることに注意だよ。gmを上げるにはdc電流を上げるかアスペクト比を上げる必要があるよ。

前者は消費電流を食うし、後者はチャネル長変調を無視できるうえでアスペクト比を大きくするからデバイスをかなり大きくするよ。またRsも大きくしないといけないけど、これは最終的なゲインを下げていることになるよ。あとはGmが小さく見えることからノイズの観点でも悪影響が出得るね。

このようにいろいろなペナルティがあるので、この回路の用途は線形性を重視する際に限られることが多いと思うよ。

今日はここまで、ほな。




雑談枠
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