回路設計

時定数とセトリングについて

どうも、さわざわです。

今回はセトリングと時定数について触れていくよ。オペアンプとかいろいろな回路の動作について触れてきたけど、信号を伝達するうえでセトリングって概念があるよ。回路設計においてAD変換器(ADC)とかで精度を考えるうえで、非常に重要な考え方なのでみんなも勉強していってねい。

この記事を読めば時定数を考慮したステップ応答の考え方と、時定数をもとにセトリング時間の見積もり方についてわかります。

セトリングって?

例えば下記のようなボルテージフォロワのような回路において、この回路は入力の電圧を追って出力が出てくるんだけど、その出力であるアナログ値を用いてAD変換してデジタル値を計算したいとしよう。

ADCの演算速度を速くしたい場合は入力が入ったタイミングですぐに出力電圧をモニタしてAD変換をしたいよね。でもそうなるとどうなるかな?上の理想と異なって、実際は以下のようになるよ。

出力が実際の入力値に追い付いていない状態でアナログ値をもとにデジタル値を計算するので、精度よくADされたとは言えないよね。これって等価的にはアンプの出力に↑のようにRCがついているからで、時定数によって波形がなまって追従することになるんだよね。これは時定数が大きいほど、追従までに時間がかかることになるよ。

もう一つ重要なのはADCの精度で、例えばだけど1bitのADCがあった場合に以下のように少し待てば所望のレンジに出力が入ってくれるので、ADまでにそんなに待たなくても精度エラーにはならなそうだよね。

これが10bitとかになったら、このレンジがかなり細かくなるので、出力が入力値にかなり近づくまでセトリングを待ってからADする必要があるね。

つまりはセトリング時間を決める際、時定数とADの精度をもとに考える必要があるんだね。これをもとに次項から定式的に考えてみるよ。

ローパスフィルタのステップ応答

ではまず、以下のようなLPFにおけるステップ応答を考えていくよ。ここではラプラス変換を用いて応答解析をするので、ラプラス変換の記事についてまだ見ていない人は良ければ先にこっちをみてみてね!LPFの応答についての記事もあるよ。

ラプラス変換のシステム応答解析の記事
→https://sawazawablog.com/laplace_transform_1/
https://sawazawablog.com/laplace_transform_2/
LFPの応答についての記事
ローパスフィルタについて

VXを入力にした際の出力VYへの伝達関数は以下のようになっているね。

今回入力信号であるVXはステップ応答なので、振幅に加えてラプラス表記では1/sがかかることになるね。あとは以下のように部分分数分解していこう。

逆ラプラス変換を用いてVYに対する時間応答を算出すると以下のようになったね。ここで、時間を無限にかけるとセトリング仕切って、Voに収束することがわかるね。また時定数τ(=RC)が大きいほどセトリングに時間がかかることも式からわかるかな?

セトリング時間の見積もり

ではステップ応答の結果をもとに、セトリング時間の見積もり計算をしていこう。N bit精度を求める場合、出力であるVYがVoから±Vo/2Nのレンジに入ればいいので、今回はVYがVo-Vo/2Nになるまでの時間がセトリング時間tstlになるんだね。

ではtstlがいくつになるのか計算してみよう。手順は以下のようになるね。

最終的にtstlは以下のようになったね。

ここでln(2)=0.693なので、10bitADCの場合っておよそ7τのセトリング時間を待つ必要があるんだね。なので極力時定数は下げるような努力をしなくちゃいけないんだね(まあ設計的には時定数ありきでどうするかって感じだけど)。

次回予告

今回はある時定数におけるセトリング時間の見積もりについて勉強したけど、実際はこのセトリングって理想的なんだね。オペアンプとかにはスルーレートっていう特性があって、これが理想的なセトリングより遅らせるケースがあるんだ。次回はこれについて触れていこうと思うよ。



今日はここまで、ほな。




雑談枠
近所にスズメバチの巣があるのか最近まではときたまスズメバチが横切ることがある。さわざわは道を譲り、食物連鎖の下層に居ることを実感。遭遇するたびに寿命が縮むような。ハチってなんであんな怖い見た目なん。危ないから怖い見た目なのか、怖いから危ない見た目なのか、とりたまである。

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