どうも、さわざわです。
今回はリングオシレータについて触れていこうと思うよ。これっていうのは発振器として用いられるんだけど、ほとんどのチップではクロックを用いて駆動させるケースが多いわけで、その際のPLL内部で用いられてたりするよ。PLLはバンドギャップレファレンスとかと同じように大半のチップに入ってるような回路で、理論も安定性設計を応用したような考え方なので、みんなも勉強していってねい。
この記事を読めば、リングオシレータの発振条件について伝達関数の観点から理解することができます。
Contents
発振器とは
リングオシレータとは、発振器として用いられるんだ。以前に安定性設計の話で、回路が発振してしまうと機能しなくなるので、発振しないように設計することが必須だって話をしたね。
→ネガティブフィードバックについて
→安定性設計におけるポールと位相余裕について
→オペアンプの安定性と最適な位相余裕について
→オペアンプの位相補償:ポールスプリットについて-基礎概念を理解しよう編-
→オペアンプの位相補償:ポールスプリットについて-小信号等価回路での解析とゼロ点の考慮-

発振器ってのはその逆で、あえて発振するように回路を設計するんだね。発振するとぐわんぐわんと出力が上下に増幅していくけど、やがて電源とgndのレベルに律速して周期的にオンオフするような波形を出力するんだね(厳密には制御要)。

この出力周波数を駆動によって制御できるVCO(電圧制御発振器)って回路が、チップ内のクロック生成に用いられるPLLに搭載されていて、このVCOは発振器を応用したものになるんだね。

発振器を実現すると手段の一つとしてリングオシレータがよく用いられていて、今日はその基礎的な内容だけ触れてみよう。
発振する条件
ここで以前までの安定性設計の話の復習になるんだけど、発振する条件ってのは以下のようにFBがかかってる際に位相が-180deg回転した際にAβが1以上のだった場合にFB信号がもとの信号にどんどん加算されていく正帰還となるため、発振の条件を満たすことになるんだね。

なので逆に発振させたい場合は-180deg回転させた際にループゲインが1以上あればいいんだけど、単純なソース接地回路を単体で考えたときに伝達関数は以下のように表せたんだったね。
ソース接地回路の伝達関数や周波数特性などについては以下から読んでみてねん。
→ソース接地回路について_小信号等価回路で伝達関数と周波数応答を出そう編
→ソース接地回路について_いろいろなソース接地回路に触れよう編


ここでポールは一個しかできないわけだから、仮に出力をそのまま入力にFBしても周波数特性的には↑のように位相が-90degしか回らないため、-180まで回すには次のように2段分のソース接地が必要なことがわかるね。
→安定性設計におけるポールと位相余裕について

ところが2段だとソース接地的には出力と入力の極性がそろってるわけなので、本来はNFBに対して-180deg回転した際のゲインの話で発振するか否かの話だったところが、FB信号自体がポジティブなのでこれでは-180deg回転してもむしろ発振しないってことになるんだね。

-180deg回すってのとのFB信号を入力と逆特性のNFBにするってことの両立を考えた際には、以下のように少なくとも3段でつないでリング状にするのがよさそうってことが想定できるね。これを3段リングオシレータなんて呼ばれたりするけど、これだと最大で-270degまで位相が回転して、かつNFBとなっているので、発振の条件も満たす設計が可能となるね。

じゃあ実際にはどうやったら発振の条件を満たすのかについて深ぼってみよう。
発振を実現するには
発振を実現するにはこの3段の伝達関数から、位相が-180deg回転した際のゲインってのが大事になってくるわけなんだけど、つまりは1段で60degずつ回転すればいいわけだね。

ここで複素数で位相シフトを考えた際に以下のようになるよ。


結果としてω0=1/RDCLとした際にωosc=√3*ω0を満たすような周波数が180degのシフトを実現して発振周波数となるんだね。

もう一個はこの際にループゲインが1以上あれば発振となるってわけで、これはリング状になってるので単純に3段の伝達関数の絶対値が1以上となっていれば発振するってことになるね。なので以下のように計算できるよ。

ここでdcゲインが↑を満たせば発振するってことになるよ。
ちなみにここでA0>2だと無限大に発振するのに対して(電源電圧で制限されるが)、A0=2であると振動するような応答に切り替わるのかな。
おそらくここら辺は制御が必要なわけで、例えば上記でいうgmなりRDなりを電圧によって制御できるパラメータにしておくことで、発振周波数なりdcゲインなりを調整できることになるので、VCOとして利用することができるってことになるよ。
リングオシレータに関する詳細は以下からもっと詳しく勉強できるよ。リングオシレータから始まってPLLの概要を深く知れると思う(発振器とPLLで別の章立てになっていて、抑えるべきところを深く抑えてる印象)。

あとはいかにもPLLの章があって、Razaviより内容量はあっさりしてるけどちゃんとじったーあたりまで触れていて、わかりやすい説明のイメージ。例題がかなりシンプルで理解をわかりやすくさせてくれているような(PLL以外の回路ブロックも網羅的にあるのがいい)。

Analog Integrated Circuit Design
ちなみに聞いた話だと、リングオシレータの発振周波数を求める問題って東大の大学院の入試でも出てたみたい。リングオシレータまで行くとちょっとかじっとかないとイメージわかん気もするけど、これくらいは皆さんおちゃのこさいさいなのかしら?
今日はここまで、ほな。
雑談枠
学部の頃ってソース接地回路すらちゃんとわかってなかった気がするなぁ、って遠い目してる。
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