回路設計

kT/Cノイズとノイズ帯域幅について

どうも、さわざわです。

今回はkT/Cノイズとノイズ帯域幅(NBW)について触れていこうと思うよ。kT/Cノイズについて基礎的な話から入って、カットオフ周波数とNBW周波数との違いにまで話を伸ばしていこう。kT/Cノイズに関しては別途サンプルホールド回路観点で深掘りする記事を書いてみようかなと(以前書いた記事をリライトする形で)。ここら辺のノイズの話は整理しないとなかなか難しいと思うんだけど、みんなも勉強していってねい。

この記事を読めばkT/Cノイズについて基礎的な観点で理解でき、ノイズ帯域幅との関係についてわかります。

ノイズのモデル

ノイズのモデルとして、以下のようにローパスフィルタ(LPF)のような等価回路で表記できることが多いよ。この際にノイズ源は下記の抵抗になるんだけど、nchやpchも含めて1/gmの抵抗成分によってノイズ電圧としての大きさが決まっているので、それらを合算した値がこの抵抗の中に含まれていると考えていいよ。

この際のノイズの加算については、無相関のノイズであることから、2乗して加算して最後に√を取るような形となるよ。ここについては以前に記事をまとめているので、読んでみてねん。ただ今回はRとしてだけ考えて取り扱うよ。
ノイズの無相関と有相関について

また、他のノイズの話も以下にまとめているから読んでみて~。
ノイズの基礎について
ソースデジェネレーションを用いた電流源とノイズについて

モデルを用いた熱ノイズの計算

じゃあこの際の抵抗がノイズ源となったと考えて、熱ノイズが電圧としていくらになるかというと以下のようなVnでかけるんだね。

ここでは単位として/√Hzがついていて、まあつまりは色んな周波数の信号が、Vnの値だけまじりあった結果としてがたがた揺れてるノイズ電圧に見えてるんだね(周波数によって値が変わって、ある周波数帯だけを取ってるような単位だと思うけど、そもそも熱ノイズは周波数によって値はほぼ増減しない)。

この際にノイズ評価ってのはノイズ単体だけでなくて、信号との比から考えないといけないってのを以前に書いたと思うんだけど、このVn[V/√Hz]では色んな周波数の信号のどの話をしてるのか分からないから、SNRっていう信号との比を考慮した評価ができないんだね。

ここでVnを各周波数で積分していって、トータルでどれくらいのノイズなのかって計算を挟まなくちゃいけないんだ。

熱ノイズは以下のようにどの周波数帯でも一定だから簡単そうじゃない?って思うかもだけど、

実際には↓のようにLPFのカットオフ周波数fcによって減衰がかかるため、これを考慮しなくちゃいけないよ。じゃあそれを踏まえて各周波数のトータルのノイズ電圧Vn_rmsを計算してみよう(以下の面積を出すイメージ)。

これは以下のようにVnにLPFとして帯域減衰がかかった値を、周波数について0~∞まで積分して行くよ。ここでノイズはプラスに振れてるかマイナスに振れているかランダムなので、絶対値の2乗を取って計算されてるよ(ベクトル観点で無相関ノイズの記事で触れてるよ)。

んで激難積分きたなぁって感じだけど、ここでは置換積分で計算していくよ。以下のように2πfRCをtanθに置き換えて、dfもdθに置き換えたいので以下のように計算していくよ。

そうすると最終的には三角関数が消えていって、以下のように淡白にかけるんだね。この際積分はそのまま係数が出てきてπ/2となって、計算が完了するね。

ここでは計算中に2乗で計算してたけど最終的には絶対値だけ取るため、2乗を外して|Vn_rms|=√kT/Cとかけるんだ。これをkT/Cノイズなんて呼んだりするよ。ここで重要なのはVn_rmsにノイズ源であった抵抗Rの値が入らないことになることだよ。

これっていうのはRが大きくなることで低周波のノイズは振幅が大きくなっていく一方で、時定数の増加によってfcが小さな値になることから高周波のノイズは減衰されて、全周波数を合算した際に同じくらいの量になるってことを示してるんだね。

あとこの際のVn_rmsってのは単位は[Vrms]って表せて、これでようやくSNRとして評価することが一般的なんだけど、じゃあこのVrmsってなんなんだってのを次項で深ぼろう。

kT/Cノイズが示すものは何か

このVrmsって電圧のroot mean squareなんだけど、まあざっくりいうとノイズが上下に揺れてて、その幅を示した実効的な値っていうのが説明として正しいんだろうか。

容量に対してノイズ電圧がどう揺れるかっていうと、ある時間では全然揺れていないし、ある時間ではマイナスに小さく、ある時間ではプラスに大きく揺れているかもしれなくて、その平均的な揺れの幅を示した実効値ってことになるよ。

なので実信号に対して、平均的にどれくらいノイズの揺れ方が入ってきてしまうのかってのをSNRでは評価してることになるのかな。

ということでこの揺れ幅を抑えたい場合には式の通りにCを大きくするほかないってのが悩ましいポイントなんだね。

NBWとは何か

最後にノイズ帯域幅(NBW)について触れよう。

これは何かというと、さっき複雑な積分の計算をしてVn_rmsを計算したと思うんだけど、それを簡潔にするための指標なんだね。さっきのが何で複雑だったかというとfcから減衰していくような台形上の特性であることから、この面積(Vn_rms)を出すために積分してってことだった。

NBWが示す周波数fNBWってのはこれを以下のような直方体形の特性にして換算し直せば、面積が簡単に出せそうだね。じゃあここでfNBWはどうやって決まるんだろう。

まあこれは一度積分で計算したわけだからそんなに難しくなく計算ができて、fNBWで換算した場合は単純な四角形であることからその面積は以下のようなVn2とfNBWの積になるね。

んでその結果が、さっきの積分の計算結果と一致するようにfNBWを決めたいので、↑のように表せるね。ここでVn2自体は消しあえるので、fNBWは以下のように表せるよ。

カットオフ周波数と帯域制限幅って何が違うのかってなったときに、こんな違いがあるんだね。なのでVn2がわかってfcがわかれば、π/2かけて掛け算して√取るだけでrms値を計算できるんだ。


今日はここまで、ほな。


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